経営分析の解説 これだけは知っておきたい10の経営分析指標(2)

経営分析は、決算書を分析する手法の一つです。
売上高営業利益率、流動比率、自己資本比率、固定長期適合率などの「○○比率」で計算される値を使って決算書を分析し、問題があるかないかやどこに問題があるかを明らかにし経営改善に役立てるものです。

○○比率は多数あり、経営分析で代表的とされるTKC経営指標では40個くらいあります(TKCは会計ソフトを開発して企業や会計事務所に販売する会社で、そのソフトには決算書を作成する機能だけでなくそれを分析する機能を持たせています)。

さすがに40個もあると、相当の手練れでないと、正直、何が何だかわからないということになりかねませんので、最低限知っておくべき10の経営分析指標をご紹介したいと思います。
それは以下の指標です。
①総資産利益率(ROA)
②売上高利益率
③総資産回転率
④自己資本比率
⑤有利子負債倍率
⑥借入金月商倍率
⑦付加価値率
⑧労働分配率
⑨1人あたり付加価値
⑩損益分岐点売上高

順に解説したいと思います。
なお、文中の標準的な値は、一般的な製造業や販売業をイメージして記載します。IT業界などは、土地や在庫を必要しないことが多いため、以下の解説中で出てくる値は参考にならない可能性が高いですのでご注意ください。

本日は、上記の④~⑥まで解説します。
安全性を確認する指標群です。

1.自己資本比率

計算式は、自己資本÷総資産です。

自己資本は、貸借対照表の右側下の「資本の部」の額を持ってきます。総資産は、貸借対照表の左側の「資産の部」の額を持ってきます(右側の負債の部+資本の部でも同じです)。
これは安全性を評価する指標です。
金融機関は特にこれを気にします。自己資本比率が低いと倒産する可能性が高いからです。

貸借対照表の右側は負債と資本ですが、これは、ビジネスに必要な左側の資産の調達の方法を表します。
つまり。
・誰からどういう契約で調達したか?
です。
負債は他人からの調達を表し、資本の自己からの調達を表します。負債は返済義務がありますが、資本は返済義務はありません。
返済義務のない資本が増えれば増えるほど資金繰りは楽になります。返済しなくてもいいわけですから(配当は支払いますが)。つまり、資金繰りに詰まって銀行口座にお金が無くなって倒産、というリスクが低くなります。

一般に自己資本比率は50%あれば安心と言われます。自己資本比率を上げるには、以下の方法があります。
①増資して資本金を増やす
②儲けて利益を蓄積する
③資産を圧縮する

オーソドックスには②と③になります。①はオーナーに資金余裕があるか、投資家が投資してもいいと言ってくれる場合に限りますので、そうそう採用できる方法ではありません。
②は、毎期、利益を上げれば、その分は自己のお金になりますので、それを貯金するようなイメージです。貯金するだけでなく、それを原資に負債を返済して、返済義務を減らしていきます。安全性が高まります。
③も重要です。そもそもビジネスに必要がお金の総額を圧縮できれば、調達しなければならないお金も圧縮できます。
場合によっては、他人から調達する必要がなく自己資金だけで賄えるかもしれません。
③をするためには、前回の総資産回転率のところで書いたように、資産を高速回転させることがポイントです。お客様からの代金は早期に回収する、在庫は当座買いでため込まない、中古機械を活用するなど資産を圧縮する方法はいくらでもあります。

また、自己資本比率は「時価」で計算しないといけません。金融機関も「時価」でチェックしています。
これには、分母の「資産」の評価がポイントになります。
資産には、売掛金(販売後の未回収の代金)、在庫、固定資産(機械や不動産)、投資資産(子会社への出資やゴルフ会員権などの財テク)が、「支出した時の支出額」で記載(=計上)されています(機械などは会計や税務のルールによって金額を減らしていきます(=減価償却)。機械は使えば古くなり価値が落ちるからですね)。
計上されている金額は、資産にそれだけの価値があることを表しますが、まれに、計上されている金額ほどの価値がないときがあります。
例えば、
・得意先が倒産してしまって回収できない売掛金
・売れ残ってもう売れない在庫
・使っていない機械
・価格が暴落したゴルフ会員権
などです。

このような資産は、計上されている金額ほどの価値がありません。よって、実際に現金化できる金額まで価値を下げる必要があります。左側の資産の価値を下げたら、同額を右側の自己資本から控除します。つまり、自己資本が減ります。回収できない分は架空の価値なので、それを実際の価値にまで調整するわけです。
この作業をしたうえで、改めて少なくなった総資産と少なくなった自己資本で、自己資本比率を計算します。いわば、実力ベースの自己資本比率ですね。
実力ベースでないと、本当の安全性は図れませんので、この作業をした上で、自己資本比率を計算しましょう。

2.有利子負債倍率

債務償還年数ともよばれます。毎年のキャッシュフローで借金を何年で返済できるか?を問う指標です。
返済義務のある借金の額と返済原資となる毎年のキャッシュフローのバランスを見ますので、安全性にかかわる指標です。

計算式はこうです。
・(借入金総額-運転資金)÷当年キャッシュフロー

借入金は、貸借対照表の右側の負債の部にある「長期借入金」「社債」「短期借入金」の額です。外部から借りた借金ですね。
運転資金は、受取手形+売掛金+在庫-買掛金-支払手形です。現預金から在庫までは貸借対照表の左側に、買掛金と支払手形は貸借対照表の右側にあります。
キャッシュフローは、経常利益×70%+減価償却費です。70%とするのは、30%は税金でなくなってしまうからです。また、減価償却費は費用となり利益を圧縮しますが、実際にお金が支出されているわけではないので、利益に足し戻します。利益は将来的にキャッシュになるので、そのまま使います。

目安は10年です。当年のキャッシュフローの10年分くらいの(運転資金控除後の)借入金の残高であれば、返済に窮することはないだろうという見方です。金融機関が貸出を検討するときに10年超えるか超えないかを目安にするといわれています。

実際の返済は、5年、7年、10年など契約によって決まりますので、実際の毎月の返済は当年のキャッシュフローを超えていることもありますが、返しっぱなしではなく、適時に返済した分を新たに借りて銀行残高を増やして、毎月の返済とのバランスを取ることになります。

いずれにしても、10年を超えると黄色信号という感じですので、借入金の残高に目配りしましょう。

3.借入金月商倍率

有利子負債倍率と同様に借入金の総額管理の目安になる指標です。分不相応の借入金は経営を圧迫します。
計算式はこうです。
・借入金÷月商
借入金は、短期借入金、長期借入金、社債です。月商は年間売上高を12で割った売上高です。
月商は売上高ですので、その額が返済原資になるわけではありません。仕入代金や給与などの経費を支払うからです。返済原資になるのは、上記のキャッシュフローと近似値ですが、売上高というわかりやすい数値を使うことで、借入限度の目安をつかもうという感じです。
業種にもよりますが、3倍~4倍が限度とされます。

4.まとめ

今回は、安全性の指標を解説しました。
金融機関が重視する自己資本比率(実力ベース)や有利子負債倍率は常にチェックしておきたい指標ですね。
これら指標が悪化すると、
・融資を受けられない
という事態になります。返済一辺倒です。結構つらい状況に陥ります。まぁ財務バランスが崩れて安全性に黄色信号が灯るわけですから、借金返済にしばらくは注力してバランスを安全性を高める時期が必要にはなりますが。

利益を出すと同時に、資産の管理をしっかりして高速回転させて、借入金に頼らなくてもいい経営を目指しましょう。

こちらも記事も参照ください。決算書の読み方などを解説しています。
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